【KPOPから見る韓国文化「虎が降りてくる」と「倀鬼」】

韓国伝統

韓国の生活と街角から流れるKPOPは切っても切り離せないもの。 

あの曲が流れれば春、この曲が流れたのは何年前…。音楽で季節を感じたり、当時のあれこれ思い出すことも多いですよね。 その歌手や音楽を詳しく知らなくてもCMで何度も聞いているうちに、流行りの音楽を知ってたなんてことも。

そんな生活の一部である韓国の音楽ですが、その中でも外国人としてとても気になったのは韓国の古典芸能を彷彿とさせる曲です。 

今回は、韓国の古典を感じさせるKPOPとそこに登場する文化について調べてみました。

이날치(イナルチ)「범 내려온다(虎が降りてくる)」

古典芸能とKpopの融合と言えばオルタナティブバンド、イナルチを思い出す方が多いと思います。パンソリをドラムンベースに合わせた国楽フュージョンバンドです。

2021年7月末、韓国観光公社YouTubeチャンネルで韓国各地の観光スポットをイナルチの音楽とダンスで紹介する動画を作成し、国内外で話題になりました。 

この曲「범 내려온다(虎が降りてくる)」はチキンのCMから選挙番組にまで使用されヒットとなりました。そもそもこの曲はパンソリ「水宮歌」の1章です。  

この「水宮歌」の物語は「토끼 와 자라(ウサギとスッポン)」または「토깽이전(ウサギ伝)」等のタイトルで子供の昔話として絵本にもなっているので、お子さんのいるご家庭ではなじみのあるものではないでしょうか。

童話「토끼와 자라(ウサギとスッポン)」

~昔々、竜宮に住む竜王が病に伏してしまいます。仙人に「ウサギの肝を食べれば病気が治る」と言われ、海の生き物を代表しスッポンが海を出て陸にウサギを探しに行くことになりました。しかしこのスッポン、陸に上がるのは初めてでウサギを見たことがありません。

童話ではカットされてしまいますが、ウサギを探しに陸に上がったスッポンがとりあえずウサギを呼んでみます。しかしなぜか間違って虎を呼んでしまい、呼ばれた虎は喜んで、山から下りてきてしまいます。その場面がこの「범 내려온다(虎が降りてくる)」です。

ウサギを呼んだつもりが、やってきたのは虎。海の世界にはいない猛獣です。虎が降りてきて、そのあとスッポンはどうなってしまうのか。続きのパンソリもイナルチが歌っています。 

~スッポンは意を決して虎と戦うことを決め、虎とにらみ合いになります。結果、急所に嚙みついてスッポンが勝ち、虎は山へ逃げて行きます。

こんなに頑張ったスッポンですが、お話の中ではちょっと報われないようです。

何とか見つけたウサギを騙し、スッポンはウサギを竜宮に連れていきます。とらえられたウサギは自分の肝を取られることを知り、何とかこのピンチを切り抜けようとします。  

「肝は大事なものなので家に置いてきた。取りに帰りたい。」 

スッポンはまたウサギを陸に連れて行きます。陸についたウサギは「家に肝を置いてくる生き物が何処にいる。」と笑い逃げてしまいます。  

逃げおおせたウサギは、今度は鷹に襲われますが、また鷹を騙し、無事家に帰るのでした。 

このパンソリ「水宮歌」は全編通して2時間かかるそうですが、イナルチのアルバム「水宮歌」はYouTubeの公式チャンネルでも聞くことができます。歌詞は現代の韓国語と違い、なかなか難しいですが、物語が分かるとイナルチの水宮歌もパンソリの水宮歌も、どちらももっと楽しめそうですよね。

안예은(アンイェウン) 「창귀(倀鬼)」

こちらは古典音楽ではありませんが、中国や韓国の民俗的妖怪「倀鬼」が登場します。倀鬼は虎に食い殺された人間がなる妖怪です。韓国の民謡のリズム(3拍子)で伝統的な楽器を使いながら韓国の妖怪「倀鬼」が語る物語のように作られています。

※注意※ 

映像がホラーです。苦手な方はご注意ください。

~旅人が夜道を歩いていると、誰かに声をかけられます。  

「ちょっと私の話を聞いてくれないか」  

「水でも飲みながら少しここで休んでいったらいい」  

その誰かは旅人に一方的に話し続けます。  

「私は実は今年21歳になった青年なんだが、調子に乗って虎を捕まえてやろうとしたら命を失った。このままだと成仏してあの世にいけない。そうだ。あなたが(死んで私を)助けてくれないか?」 

そもそも倀鬼ってどんな妖怪?

日本の昔の書物にも虎は登場しますが、韓国や中国から寄贈されたり、狩って持ってきたもの。そのため、私も一休さんの屏風の虎や、加藤清正の虎退治の話以外は特に聞いたことがありませんでした。

しかし韓国は昔から虎が多く生息していて、虎に殺される人が後を絶ちませんでした。そのため、王が虎討伐の軍隊を編成したことも。

人は虎に殺されると、この妖怪「倀鬼」となりますが、虎によって命を奪われたにもかかわらず、自分を殺した虎の奴隷として働かなければなりません。

人、特に家族や身近な人を虎のもとへ誘い出し食い殺させるのです。まずは虎の腹の模様になり、1度人を誘い出し、虎がその人を食い殺したら、次は虎の顔の模様になり、親戚や隣の家の人間の名前を3回までなら呼べるようになります。

3回目でやっと成仏することができます。これは一度人を食べた虎がまた被害にあった人の村や家族を襲うことから生まれたのではないかと言われています。

あるときは虎を台所へ誘導し、虎が釜をなめれば、なぜかその家の主人のお腹が鳴るので、一人台所へ向かった妻は殺されてしまいます。

人に化けることもあり、この歌のように人をかどわかし、虎のもとへ誘います。この倀鬼の親戚や家族、隣近所の名前が分かってしまう性質から、家族を虎に殺されるとその家族は結婚することができなかったのだそうです。倀鬼の親戚になってしまうと倀鬼に名前を呼ばれ、虎に狙われてしまいますからね。

倀鬼を成仏させる方法は、3回人を誘い虎に殺させるか、その虎を殺すことしかありません。

今はもういない韓国の野生の虎ですが、文化の根強く残った地域では今も倀鬼を恐れてるのだそうです。その地域で兵役に当たった私の夫は夜の交代の時、たとえ軍隊内であっても、倀鬼の3回まで名前を呼ぶ性質を考慮し、4回目まで返事をしてはいけなかったそうです。

また、韓国のあちこちで虎に犠牲になった人たちの塚「虎食塚」が残っています。大きな石を積んで山の形にしてあり、中には上には帽子のように釜が乗せてあるものも。これは亡くなった人が倀鬼にならないようにまじないをかけてあるのだとか。

終わりに

どちらも共通して虎が関係するKPOPでした。韓国と言えば虎と言っても過言ではないほど、虎のキャラクターや商品がたくさんありますよね。

こんなにもたくさんの人が犠牲になり妖怪にまでなってしまったというのに、なぜ韓国の人たちはこんなに虎を愛してやまないのか。それは、虎が悪い人間を成敗し、正しい人間を守ってくれると信じられていたからでもあるのだそうです。私も身近な人に虎について聞いてみたり、こんな文化があったのかと新しい発見になりました。

文化を調べるとKPOPはもちろんのこと、民俗文化やパンソリについても興味が湧いてきました。個人で調べたことなので足りないことも多いかもしれませんが、改めて知識を持って聞いてみると、物語や背景が見えて、PVの映像も歌詞も今までよりもっと面白く感じるようになりました。

皆さんもぜひ文化と共に楽しみながら改めて聞いてみてはいかがでしょう。

ライター(ちばちょごり)

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